もともと少人数だった当時の音楽隊にホルンが4本も入っていることは異例であったと思われる。だがこのような曲がハイドンの交響曲には3つある。第13番ニ長調、第31番ニ長調「ホルン信号」、それにこの第72番ニ長調である。すべてニ長調なのはホルンが引きやすいからなのかも知れないが、よくわからない。
この3つの交響曲はだいたい同じ時期に作曲されたと考えるのが普通だろう。さらには作風の観点からも類似点が多く、この72番は他の2曲と同様、1960年代前半の作曲と今では考えられているようだ。これまで70番代の交響曲はすべて1770年台後半の曲だったから、10年以上も遡ることになり、順を追って聞いてきた聞き手を混乱させる。が、このようなイレギュラーは、これまでにはしばしばあったが、いよいよこの72番が最後である。
第1楽章のティンパニの強打で始まる冒頭は、なぜかプロコフィエフの「古典交響曲」を思い起こさせた。威勢のいい第1楽章は全体の中でもっとも素晴らしい。これに対して第2楽章は、フルートとソロ・ヴァイオリンの掛け合いが続く静かな曲である。
第3楽章は続く第4楽章よりも派手でホルンも活躍するが、第4楽章はそれまでの曲よりも俄然長く、延々とアンダンテが続く。ここは変奏曲ということになっているが、丸でダンスを踊っているようだ。コントラバスなどが活躍して、特徴的ではある。コーダの部分では再び威勢がよくなって、わずか30秒そこそこで終わる。アダム・フィッシャーの演奏は、きびきびして良い出来栄えである。もしかしたらこの曲は、この演奏がナンバー・ワンではないかと思われたが、他の演奏を丸で聞いていないので、それ以上のことは何も言えない。
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