
この第1番を聞くと、もう半世紀以上も前の演奏であるにもかかわらず、現在リリースされているどの演奏よりもキビキビとしていて、聴き劣りがしないばかりか、もうすでにこのような演奏があったのに、今の演奏家はすることがなくて大変だなあ、などと思ってしまう。そのくらいにこれは、突き詰めた完成品である。第2楽章のカンタービレも、イタリア人にしかできないような雰囲気で素敵である。第3楽章の舞踏風のリズムも、このように刻めばなるほどなあ、という感じがしてくる。総じて現在に通じるような演奏スタイルの原型があるように思える。
トスカニーニを起点にカラヤンを経て、いまでは数多くの指揮者の演奏が存在するが、その流れも源流はこの演奏ではないかという感じである。そう考えれば、すべてのベートーヴェンの交響曲がそうなのかも知れないが、あまりトスカニーニばかり聞いているのも面白くないので(そういう聞き手もいるが)、私はトスカニーニについてはこの第1番で代表させておこうと思う。
この他の演奏で思い出に残っているのは、これまでに触れた物以外では、バーンスタインのウィーン・フィルによる演奏、それからやや個人的ではあるがショルティの90年代の演奏といったところだろうか。まだよく聞いていない演奏では、ライナー盤とマリナー盤に興味がある。
それにしてもこの演奏の第4楽章は圧巻である。まるで春の嵐のような演奏だが、そう言えば今日の首都圏は「爆弾低気圧」が列島を北上し、台風並みの大嵐となった。そういう日にこの演奏を聴いている。録音が古いことを残念に思う向きにはムーティによる演奏が推薦できようか。ただムーティの全集は大変な名演奏だが、これがデジタル録音であるにもかかわらず、非常に透明度の悪い点が何とも悔やまれる。
0 件のコメント:
コメントを投稿