まだ大阪で過ごしていた学生時代、私にとってテレビで見るオーケストラは楽しみのひとつだった。丁度「N響アワー」が始まったのが1980年だから、中学生だった私が最初に見たN響の番組は、やはりこの番組だったと思う。その中で、何度もさかんに放映されたのは、何と言っても次の指揮者たちである。ウォルフガング・サヴァリッシュ、オトマール・スイトナー、そしてホルスト・シュタイン。
サヴァリッシュの名演奏は、テレビで見たベートーヴェンの交響曲第4番と第8番。N響の響きがいつもと違うと思った最初の瞬間である。モノラルの番組でもそれは感じられた。当時サヴァリッシュはまだ若かったが、その演奏スタイルはより若い時から老齢になるまで基本的に変わっていない。
スイトナーは東独の出身で、ドイツ統一後はほとんど指揮台に立たなくなった少し可哀想な指揮者だったが、シュターツカペレ・ベルリンを指揮したベートーヴェン全集などは大変評判が良く、N響とはベートーヴェンの第9の名演奏の印象が強い。またスイトナーにはN響を指揮して録音したモーツァルトのレコードがあり、これがまた何ともすっきりとした名演奏であった(ドイツ・シャルプラッテンから出ていた)。
シュタインは、バイロイトで大活躍したスイスの指揮者だが、その独特の風貌で私の興味を引きつけた。年末に聞いた「ニュルンベルクのマイスタージンガー」(バイロイト音楽祭の録音)などは手に汗を握るものだったが、N響との演奏でもワーグナーがよく取り上げられたと思う。ウェーバーなども入れたN響とのレコードもあった。
さらにもうひとり、忘れてはならない指揮者が、ルーマニアの大指揮者ロブロ・フォン・マタチッチだが、私はこの指揮者の名演奏をさほど知らない。いつも紹介されるブルックナーも、実演を聞いていればさぞ素晴らしかっただろうと思う。
これ以外の指揮者はあまり思い浮かばない。今から思えば、ギュンター・ヴァントやフェルディナント・ライトナー、それに岩城宏之なども名演奏を残している。N響アワーや数々の番組で取り上げられ、そのたんびになかなかいいなと思う。
私のN響の実演での初体験は、1989年の第5215回目のコンサートで、場所は神戸文化会館。指揮者は秋山和義、ピアノ独奏は野島稔。ドヴォルジャークの序曲「謝肉祭」、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番、それにムソルグスキーの「展覧会の絵」であった。N響の地方公演というやつで、東京での公演と違い、何とも大受けする曲目が並ぶ。
それでもう少し本格的な演奏も聞きたいと思った。丁度、大阪にいずみホールという中規模のホールが出来て、大変音色がいいとの触れ込みだった。その開館記念にN響が招聘され、モーツァルトの三大交響曲が演奏された。指揮はウォルフガング・サヴァリッシュだった。この時の集中力を保った素晴らしい演奏は、私の心のなかで鳴り続けていた。上京して定期演奏会に通っていた頃、プログラムとして配られた雑誌「フィルハーモニー」にサヴァリッシュのインタビュー記事が掲載された。その中でサヴァリッシュはN響との思い出に残る演奏として、この時のモーツァルトを挙げていたのを発見し、嬉しくなった。指揮者自身、上出来だったということだろう。私もそのように感じたので、このときの演奏を今でも懐かしく思い出す。
2012年4月27日金曜日
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