「シンフォニア・グランデ」とは「大規模な交響曲」という意味だろうか。それまでの常識を覆し、ベートーヴェンのベートーヴェンたる所以とも言えるような大作を、遂に三作目の交響曲において成し遂げるベートーヴェンは、やはり偉大であった。そしてそのような曲だから、ここは堂々と、しっかりとした演奏で聞きたい。遅くても充実感があり、実力のある音楽が真剣に鳴り響く演奏・・・。

だからデイヴィスの全集はほとんど顧みられることなく、こだわりのファンだけが買い求める不遇の全集となってしまった。もともとこの武骨なイギリス人指揮者の演奏の好きな人など、そういるわけではない・・・単に力任せの演奏なんて・・・というわけである。だが、ファンはいるもので熱心な人はコリン・デイヴィスと聞いただけで胸踊り(私もそういうところがないわけではない)、シュターツカペレ・ドレスデンと聞いただけでコレクションに加えるような人が・・・それもそう少なくないのである。
デイヴィスとドレスデンの伝統オケががっぷりと組み、それをデジタル録音したこのCDは、だから私の大のお気に入りである。全集として持っているもののなかで、いわゆるベーレンライター版、あるいは古楽器奏法流のものを除けば、これはムーティと並ぶ私の伝統的ベートーヴェン全集のコレクションである。その中から、どの曲を選ぼうかと思ったが(どれも捨てがたいのだが)、やはりここはエロイカに登場してもらった。
何も言うことはないが、第1楽章の長々とした主題提示部を律儀にも繰り返してくれるが、それがうれしくて堪らない。もうその頃にはすっかりデイヴィス調の耳になっているので、あとは遅くても緊張感の失われない重厚で美しい音色を追いかけていくだけである。葬送行進曲もたっぷりと聴きごたえがあるし、後半の音楽になったからといって力を抜くどころか、ますます熱を帯びてくるあたりは、真面目な演奏の極みである。結局、長い曲をまたもしっかり聞いてしまう。このような演奏は少くなったが、どれかひとつ置いておくとすれば、私は躊躇なくこのデイヴィス盤にする。そして他の人が何を言おうと、私はそれで満足なのである。
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