2012年3月5日月曜日

ベートーヴェン:交響曲第4番変ロ長調作品60

不気味な感じで始まる交響曲第4番では、再び長めの序奏が復活している。しかし主題に入るといきなり明るく推進力を持っており、その対照的な雰囲気がこの交響曲の特徴ではないかと思う。はじめて聞いたときは、何か火山が爆発するような感じがしたものだ。でもそのアレグロの第1楽章はやはりベートーヴェンらしい勢いと強弱の変化、ティンパニの効果と駆けまわる木管楽器など、やはりどこをどう聞いても素晴らしいものだ。

この音楽を語る際に常に引用される言葉は、シューマンが残した含蓄のある表現「2人の北欧神話の巨人の間にはさまれたギリシアの乙女」というものであろう。そして、たいていこの表現は、わかるような気がするが、適切ではない、第4番を過小評価している、と続く。けれども第1楽章のコーダ部分の幸福感と、第2楽章のまるで春の小道を散歩するかのような浮き浮きした気分は、やはり両隣の交響曲にはない雰囲気である。しかもアポロン的な美しさが横溢しているさまは、ギリシャを引き合いに出すに相応しい。

この第2楽章の幸福感を感じられる演奏が、私のこの曲のまず聞き方のポイントと考えている。指示はアダージョだが、私はここを少し小走りに駆け抜けるのが好きだ。ベートーヴェンの恋愛感情がストレートに表現されているという人もいるが、それは木管楽器が時おりソロ的な部分を弾く時に感じる。何となく憂いを含んだ淋しさは、どことなくロマン派の音楽を思わせる。

比較的長い第2楽章が終わり、第3楽章に入ると面白いリズム効果が楽しめる。スケルツォだが、これまでの第3番までの第3楽章よりも一段風格は上だ。全交響曲中もっとも規模の小さい編成だが、ここの第4楽章はおおらかな音楽なのだろう。ただそれをそのまま演奏するのではなく、最近はやりの演奏はここがめっぽう速い。それはやはりこの交響曲の実力が演奏次第では両隣の交響曲には及ばないものの、それに決して引けを取らないものだと証明したいからではないだろうか。

そこで演奏は最も速い演奏を選んでみた。デイヴィッド・ジンマンはスイスのオーケストラ、トーンハレ管弦楽団を率いて刺激的なベートーヴェン全集を敢行した。これがあまりに評判が良く、ピアノ協奏曲や荘厳ミサ、さらにはシューマンやリヒャルト・シュトラウスに発展し、遂にマーラーの全曲録音に及んだことは周知の事実である。最近ではとうとうシューベルトの全集に取り組むようだが、もうひとつ忘れてはならないのがその価格である。Arte Novaという廉価レーベルながら、その録音は一級品、しかもオーケストラの充実度はピカイチだったのだ。

一枚たった590円で最新のベートーヴェン全集が聞けるとあって、私もすっかりその戦略にはまった。ピリオド奏法の影響を受けたベーレンライター版のベートーヴェンを、これでもかとたてつづけに聞いて行った。この第4番は、そういったピリオド奏法の魅力を知るのに最適かも知れない。時々作曲者も意図しない木管楽器の装飾音が出てきてびっくりすることがあるが、それはこの第4番でも第2楽章の後半などに顕著である。こんなに最終楽章を早くしているのに、オーケストラが何とか弾き切っているのも凄い。この終楽章を聞くと、ギリシャの乙女もジェットスキーに乗ってエーゲ海を爆走しているような気がしてくる。


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