2012年3月9日金曜日

ベートーヴェン:交響曲第8番ヘ長調作品93

誰にも献呈されなかった8番目の交響曲は、古典に回帰したような作品である。だがこの曲には序奏がなく、いきなり第1主題がアレグロで始まる。その勢いの良さは、この曲を始めて聞く人を釘付けにするだろう。わずか10分あまりの快速急行だが、いつものようにベートーヴェンらしい音楽である。第7番と第9の間に埋もれたような小さな曲でも、こんなに立派なものか、最初に聞いたときはそう思った。

特徴的な部分は第2楽章で、これはいわゆる緩徐楽章ではない。メトロノームを思わせるリズムに乗って可愛らしくおどけたように弦楽器が流れる。平凡な演奏で聞くと飽きるが、いい演奏で聞くと非常に楽しい。速めのテンポが心地よい。

第3楽章の中間部で、ホルンと木管楽器が戯れる部分がある。ハイドンやモーツァルトにも似たような部分が多く、それ自体は珍しくはない。だがこれはベートーヴェンが書いたメヌエットである。なかなか気づかないがここは三拍子のリズムである。そしてこれは保養地に向かうベートーヴェンが、なぜか急いで近道を通った時に、郵便馬車に揺られていったというシーンがあって、「不滅の恋」とかいった映画の印象的なシーンだった。その郵便馬車のホルン(ポストホルン)がこの音楽のヒントになった、というのである。私はこのトリオが大好きだ。もっともベートーヴェンを感じるといっていいかも知れない。

終楽章の速さは議論の的だが、終わりそうでなかなか終わらないコーダも楽しい。ベートーヴェンの終わり方は、この曲が一番しつこいかも知れない。曲が小規模なだけに、特にそう感じる。全体に明るい雰囲気で、私は第2番の次によく聞く曲である。

お気に入りの演奏はトマス・ダウスゴーがスウェーデン室内管弦楽団を指揮した全集の中の一枚。小規模編成で、たたきつけるような強いパンチ力のある演奏が新鮮だ。これもやはり新しいベートーヴェンの演奏と言えるだろう。このディスクはSIMAXというノルウェーの会社からリリースされているため、日本ではほとんど評判になっていない。だがここで聞ける演奏は、最高のベートーヴェンの演奏の1つである。この指揮者は一度実際にきいてみたいと思っている。なおこのCDには、他に「シュテファン王」、「アテネの廃墟」、歌劇「フィデリオ」序曲、序曲「命名祝日」、それに第7番と同時に初演された「ウェリントンの勝利」が収められている。

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