2011年4月
今日の時点で、震災関連のニュースはひところに比べればかなり少なくなり、表面上は落ち着きを取り戻したように見える。停電や余震が少なくなったことにより、私の会社でも通常通りの業務に戻り、多くの社員は福島の原発を含め、事件を忘れかけているようだ。だが、そういうときににもまだ収束とは言い難い状況が続いていることを忘れることはできない。
情報の収集はテレビやラジオなどの即時メディアから、新聞や雑誌に移行しているが、そのような中で今注目すべきは、第1号機に対して実施されている「水棺」作業が果たして成功するのかどうか、ということだろう。一昨日の日経新聞によれば、原子力安全・保安院は格納容器に漏れがあることを告げているが、その後の読売新聞の記事では東京電力が、水の注入作業を加速することを伝えている。その理由は、水漏れがなかった、というのだからどちらが本当かわからない。
この状況は、この作業をめぐって専門家の間でも意見が分かれていることを意味するのではないかと思い、私は非常に気にしている。原子力安全・保安院と東電は、今週から共同で記者会見を開いているが、その初日がこの有様である。
どちらに転ぶかわからない状況はほかにも沢山見受けられるが、そういう事態が生じている最大の理由は、本当の状況が隠されていることによるものだろうと思う。例えば夏に心配される電力不足も、今のままで乗り切れるのか停電の可能性があるのか、どうもよくわからない。
一方で、原油価格が高騰し、燃料不足に追い打ちをかけつつある。また各地の工場が操業停止に追い込まれた影響で、経済的な損失が拡大することが叫ばれている。サプライ・チェーンが破壊され、飲み水等の不足が著しい。日本に入港する船舶が減り、物資の不足が心配されている。西日本へ工場等を移転しても、関西の電力の半分は原子力による発電で賄われており、その中心地である福井県の原発は、断層に近い位置に立地している。
日本は極めて脆弱な状況にあることが浮き彫りになった。そうでなくても静かに進む高齢化と、出口の見えない経済的閉塞感、さらに財政の不健全化で、日本の行き詰まりはもはや頂点に達している。しかし政治は何も動かず、無責任主義がはびこり、改革が遅れている。
気を吐いているには大阪の橋下知事とソフトバンクの孫社長くらいだが、橋下知事は、脱原発の方向を模索すると表明したようだ。関西広域連合のように、国の出方を待たずに方策を示すことことそ東北地方に求められている姿勢にも感じられるが、そのような動きは今のところない。世代交代の流れは加速すると前に書いたが、一方的に進むということではないだろう。
また孫社長は多額の寄付に加え、原発に頼らない発電方式を普及させるために基金を発足させると発表したが、こちらはどういうわけか報道されていない。
このような中で、天皇陛下は被災地を見舞われた。政府の施策が無機的であればあるほど、このニュースは胸を打つ。
震災のニュースに目を奪われている間に、世界情勢も大きな変化に見舞われている。そのうちのひとつは中東情勢であり、またひとつはヨーロッパの経済問題である。
私は幼い頃にジャーナリストになりたかった。そのこともあって、ニュースを見聞きすることは今でも半分は趣味の領域でもある。けれどもこの1カ月余りの期間ほど、自分の身をもってニュースの分析をしたことはなかった。そしてそれはこれからも続く。今後の震災関連ニュースやその他のニュースもこのブログで書き続けても良いのだが、それは課題として、ひとまずこのシリーズを中断しようと思う。
最後に、この事件を象徴するかのようなニュースをひとつ。昨日の原子力安全・保安院と東電の会見のうち、外国人向けのものが英語で行われたが、これを聞いている記者は誰もいなかった、という事態があった。このニュースは「ニコニコ動画」に掲載されてるが、なぜそのような事態に至ったかについては触れられていない。また私が調べた限り、国内の主要な新聞のホームページには、そのような「事件」の記事は見当たらなかった。
どうしようもない無秩序がはびこる中で、各官僚機関の責任逃れ(謝罪)と実績作り(宣伝)のニュースだけがはびこっている。もはや政府は無能と言うしかない。
(2011/4/28)
2012年3月25日日曜日
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