2012年1月22日日曜日

旅行ガイド:「香港 路線バスの旅」(小柳淳、TOKIMEKIパブリッシング、2009年)

香港が好きだという人とそうでない人がいると思う。好きな人というのは、おそらく都会と郊外の景色が好きな人で、物質的な豊かさに単純に喜びを見出す人かも知れない。私もショッピングに興味がなくても、香港へ行くといろいろと店を回ってみたくなるから不思議なものだ。これはひとりででもやりたい。

その香港の街を気ままに歩くには、MTRや市電、それにバスに乗るに限る。私の知っている20年前の香港は、クーラーもなくバス停もどこかわからず、料金の煩雑さに辟易していたものだ。だがオクトパスが使える今となっては、路線図片手にどこへでも言ってみたいと思う。

行き先はあまり知られていないところがいい。ガイドブックに常に登場する場所は景観の想像がつくが、新界地区や香港島の南部など、バスでしか行けないところにこそ本当の楽しみが待っているのではないかと思う。よく似た楽しみに地下鉄を適当に乗り、適当な駅で下車して地上に出てみる、というのがある。これも私のひそかな楽しみである。

筆者は複雑きわまりない香港のバスを知り尽くし、その魅力にとりつかれている。そのことが自分のことのように嬉しいので、読んでいると行ってみたくなるし、自分でも何か書いてみたくなる。筆者には「香港路面電車の旅」という処女作もあるようなので、これも読んでみたいと思っている。

データは2000年代後半と新しく、わかりにくかったバスの乗り方まで詳しく書かれている。だが筆者のように思う存分香港バスを楽しむのは、実は結構難しい。それはたかだた数日という香港滞在中に、ショッピングや飲茶の楽しみを犠牲にして、ただひたすらバスに乗るなどということはなかなかできないからだ。もし同行している友人や家族などがいれば、かれらが希望する場所に付いていくことになる。それでも美味しい食事と、変わりゆく街の風景に触れるだけで、まあ十分ではないかという気分になってしまい、帰りの飛行機の中でいつかはきっと、と思いを新たにする。

さしあたり1年でいいので、できれば香港に住んでみたい。だがそれがかなわぬ今は、今後の楽しみに取っておきたいと思う。だからこの本を買って手元に置き、気が向いたらその箇所を読む、という気休め策が必要になるというわけだ。それでもこういう本が出版される事自体が嬉しい。もしかしたら同じ興味をもつ人が数多くいるのかも知れない。

0 件のコメント:

コメントを投稿

ブラームス:「ハイドンの主題による変奏曲」変ロ長調作品56a(クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮クリーヴランド管弦楽団)

ブラームスの今一つの管弦楽作品「ハイドンの主題による変奏曲」は、ハイドンの作品を元にしたものではない。ハイドンの作品とされていた頃のディヴェルティメント第46番変ロ長調Hob.II.46の第2楽章を題材としている。この曲は「聖アントニウス」というタイトルが付けられているように、古...